「テーマ・ジャンルからさがす ライトノベル・ライト文芸2017.1-2017.6」の編集作業を終えて…

2019.07.24

この度、DBジャパンでは、テーマ・ジャンルからさがすライトノベル・ライト文芸2017.1-2017.6を刊行しました。
ライトノベル・ライト文芸の分野は、2018年の図書館総合展でも多くの司書さんから「選書に困っている」というご意見を伺い企画したもので、今回無事刊行に至りました。

この索引を刊行するにあたって、対象書籍を1冊1冊手に取り、編纂を行ないましたが、肌感覚で捉えていた近年のライトノベル・ライト文芸の流行と、実際のデータから読み取れる傾向の違いに驚きも感じました。

実物を見ることによって得られた意外な情報の一部をこの場でご紹介できればと思います。

今回、採録対象とした書籍は1,268冊です。

まず、時代背景別の内訳ですが、以下のようになりました。

異世界・架空の世界 675冊
現代 466冊
歴史・時代 44冊
近未来・遠未来 34冊
現代/異世界・架空の世界 29冊
現代/歴史・時代 8冊
歴史・時代/異世界・架空の世界 7冊
近未来・遠未来/異世界・架空の世界 2冊
現代/歴史・時代/異世界・架空の世界 1冊
現代/近未来・遠未来/異世界・架空の世界  1冊
現代/近未来・遠未来 1冊

「異世界・架空の世界」というのは、異世界転生・転移・召喚もの以外にも、ファンタジー要素のある、地球上には存在しない舞台を描いたものも含まれています。
スラッシュで区切っているものは、複数の背景が存在する作品です。例えば、それぞれの世界を比較的日常的に行き来したり、回想シーンが出てくるものなど、そのパターンは多様化しています。「現代/異世界・架空の世界」の二つの背景を持つ作品の中からピックアップすると、例えば「異世界コンビニ」のように、現代の世界から、異世界・架空の世界に日常的に出勤(行き来)するような作品が存在します。異世界転移・転生・召喚ものは、冒頭部分で世界が切り替わるパターンが主流なので、「異世界・架空の世界」のみの設定となっている作品がほとんどです。

もともとファンタジー色が強めの作品群がライトノベル・ライト文芸には多いことから、「異世界・架空の世界」が第一位なのは予想どおりですが、それでも半数に留まっています。
このうち、異世界転移・召喚が137冊、異世界転生が120冊でしたので、更にその2/5程度が異世界転移・転生・召喚ものでした。

書店に行くと「異世界転生・転移・召喚」がテーマになったシリーズ物がまとまって陳列されていることが多いので、もっと比率が高いように感じていましたが、データで見ると、現代を舞台にしたファンタジーも多く刊行されています。

また、主人公やメインキャラクターの年齢層(あるいは舞台)で多かったのが高校・高校生で、276冊です。そのような背景もあるためか、人生には切っても切り離せない要素だからなのか、恋愛要素が少しでも含まれているような作品は586冊でした。

性描写を想起させる挿絵が含まれるものも40冊ほどありましたが、どのレーベルであれば比率が多いという傾向も基本的には見受けられませんでした。一般的なイメージとして、健全な内容が多いと思われるようなレーベルから刊行されたものであっても、性描写が想起されるような挿絵もありました。

40冊のうち19冊がハーレム・逆ハーレム・三角関係をテーマにしたものと比較的比率としては高いので、テーマから見ていくと挿絵の傾向は見えやすいかもしれません。また、40冊のうち30冊が「異世界・架空の世界」が舞台となったものでした。

純粋な「現代」もの(現代のみが舞台のもの)でいうと、ミステリー・サスペンス・謎解きがテーマになっているものが145冊、青春がテーマになっているものが121冊、仕事がテーマになっているものが107冊、日常がテーマになっているものが81冊でしたので、なかなかそういったシーンに結びつきにくいのもあるかもしれません。分類から見る限りでは、高校生・大学生など(青春)がバイト先(仕事・日常)で、成長しながら謎解き(ミステリー・サスペンス・謎解き)に取り組むような作品が多いように思います。

続編となるテーマ・ジャンルからさがすライトノベル・ライト文芸2017.7-2017.12の分類データも完成し、刊行に向けて日々作業を進めています。今年の図書館総合展では、その時点で刊行されている索引データをもとに、スピーカーズコーナーで分析結果などをお話できればと思っています。お時間のある方は、ぜひお越しいただけますと幸いです。